2020年ソーシャルディスタンス期もSDGsを実現した高校生の「成長する力」
2020年のクラブ活動は、コロナウィルスの影響により環境が大きく異なりました。それにも関わらず、観光甲子園の日本遺産部門グランプリを受賞した愛知商業高校ユネスコクラブ。環境の変化を乗り越え、躍進したクラブの強み、活動への思いをうかがいました。
観光甲子園のスタートラインに立つまで
――私たちは例年、全国高等学校生徒商業研究発表大会で「一年間の研究を通してどんな活動をする」ということをしてきました。それがコロナウィルスの影響でなくなってしまい、行き着いたのが観光甲子園でした。
有松は一昨年、日本遺産に登録されています。私たちは日本遺産を検索するうち、観光甲子園の新設部門「日本遺産」を知りました。「有松」「日本遺産」の研究で「有松に人を呼び込みたい」と思い、観光甲子園に応募しました。
それに以前から、私たちは有松絞りを知っていました。伝統工芸品には「伝統工芸品の結婚式」研究から携わらせていただいています。ただ、深くは堀っていませんでしたので、この機会に掘ってみようと思いました。掘ってみたらすごく魅力があり、楽しくなりました。
――予選では「未来RECIPE(レシピ)」という資料も提出しました。「有松の魅力を3分動画でPRしよう」と意識し、中でもSDGsの要素をアピールしました。556チームの中から上位14チームに選ばれ、決勝大会に進出できました。
スタートラインには、先輩の活動から繋がりました。「地域活性化」のキーワードがなければ多分、行き着かなかったと思います。
初めての動画作り
――ユネスコクラブは過去に一度(初代部長の頃)観光甲子園でグランプリをいただいています。だから今回の出場には「どうしても先輩に追いつきたい」思いがありました。
コロナウィルスの影響による休校期間は「どうしよう」から始まりました。ZOOMの使い方をたくさん調べ、皆がZOOMで繋がるうち、観光甲子園で「グランプリ」しか考えられなくなりました。
活動の制限は大きくかかってしまいましたが、それを言い訳にすると、活動に悔いが残ると思っていました。そこで三年生(3人)でたくさん話しあい、クラブ全員でもたくさん話しあいました。話しあいをたくさん重ねたから、グランプリに行き着けたと思います。
――予選の時、私たちは初めて動画編集ソフトを使いました。それまで動画を作ったことがなく「どうしよう」から始まりました。
――動画は普段から、CMやYouTubeでよく見ています。動画作りに際し、1分動画でも何百倍も時間をかけられていることを知り、まず驚きました。
驚きに加え、私たちは編集ソフトの使い方もわかりませんでした。3分間の何百倍も、2週間以上も時間をかけ、予選動画を作りました。
動画作りの大変さを実感したぶん、3分間に私たちの思い、有松のいろんな方の思いを詰められたと思います。
――動画作りには、撮影する側とされる側、どちらも「あらかじめ考えておかなければいけない」大変さがありました。
日光の加減では、逆光にならないように撮る工夫が要りました。朝に撮ったり、テキパキ撮ったりする必要もありました。時間によって映像が暗くなったり、有松の魅力が映らなかったりしました。だから撮る前準備もとても大変でした。
アングルでは「写したいものを撮れない」大変さがありました。部員の表情を写したくても、撮った角度によってまったく映りませんでした。
真剣に楽しく研究している思いを伝えたいのに、楽しんで研究しているのに、部員の表情が暗く写ってしまうこともありました。表情には現れない「撮る」大変さがありました。
――動画を時間内に収める大変さもありました。3分動画は作った当初、3分を超えました。どのようにして3分にしていけばよいのか、とても困りました。
すべてのシーンが、有松の方に聞いて撮影した「大切なシーン」です。時間内に収めるのは、心苦しくて大変でした。たくさん撮った動画を泣く泣くカットしました。
心苦しさがあったぶん、私たちができる最大限の力を活かして「ギュッ!」と、有松の魅力を詰め込みました。
――有松の魅力を伝えたい、できれば全部。でも3分動画にしないと勝てません。編集では「初めて見た人にもわかりやすいようにしよう」と、話しあいをたくさん重ねました。
――動画作りには「こんなに大変なんだ!」と実感しました。カメラの編集も大変でしたが、まずストーリー、私たちがテーマにした「万華鏡」に行き着くまでも大変でした。
動画は見て感動したり、印象に残ったりする内容にしたい。そう強く思っていた私たちは「何か仕掛けが要るよね」に至るまで、何回も話しあいました。
ストーリーも何回も作り直しました。「このストーリーにしよう」と思っても、撮って動画にしたらなにか違う。「もう1回」が何回もありました。
トロフィーを持って有松へ
――動画制作も完成したら不安で仕方ありませんでしたが、いろいろな方から「頑張ってね」「応援しているよ」と言われ、本当に力になりました。
――グランプリ受賞後、トロフィーを持って有松を訪ねました。有松の方にもトロフィーを持っていただいて、とても喜んでいただけました。本当に笑顔が嬉しかったです。
私たちが通りかかっただけで、制服から愛商とわかり「おめでとう」と、言ってくださった方もいました。私たちは撮影当時、一眼レフ1台で有松を駆け回りましたので「また撮影に来たの」と、顔も覚えてくださっていた方もいました。本当にありがたいです。
――撮影の段階からなにまで、有松の方には本当にとてもお世話になり、ご協力いただきました。よい結果をご報告できて、自分のことのように喜んでいただけて、本当によかったです。「一緒に頑張ってきた」感覚がありましたので、嬉しさを実感しました。
写真:観光甲子園 日本遺産部門 グランプリ トロフィーと賞状
話しあいの力
――部員が増えたぶん、話しあってよいものができました。それぞれ、今まで過ごしていた環境も違い、いろいろな意見が増えました。
「話しあう」よさは、動画作りでも本当に実感しました。個々人では、どれほど調べても一辺倒になってしまったり、アイデアがなかなか出なかったり。そういう陥りはこれまで多かったです。
話しあいをすると、いろいろな人の意見を聞けます。新しい視点の意見も知り、お互いに発展させあったり、自分の刺激に変えたり。本当に「いろんなことを吸収できるんだな」と実感しました。支えあっているからこそ、頑張ってしていけることも、すごく実感しました。
――動画作りでは、たくさんのYouTubeやCMを見ました。皆でよいシーンを教えあったり「この文字の出し方だよ」と勧めあったり、ずっと情報を収集して共有していました。私たちには多分どこよりも「情報収集」している自信はあります。
情報がひとつ入ると、その視点を持つだけで、身の回りのすべてが参考になります。テレビを見ていても、いろいろな情報が入ってくるようになります。
観光甲子園に出場して「自分の視点を持つ」意識をつかめたのは、よかったと思います。「自分も成長できた」実感があります。
――動画作りは初めてでしたので、動画ソフトの演出(エフェクト)機能はすべて試しました。「違う」を重ねて「これにしよう」に行き着きました。予選の3分動画作りは大変でした。
3分動画でソフトの使い方にも慣れたぶん、決勝の5分動画は細部までこだわって作れました。「こうしたい」が「こうすればいいんだ」とわかってきて、決勝大会に活かせたのがよかったと思います。
万華鏡のシーンはつなぎを考え、万華鏡を落とすシーンも撮りました。三年生の部員が拾って、覗いて、3分間のPR動画のようにしました。ちょっと遊び心を交えると「印象に残るかな」と思い、そうしました。
――作っていく中で「こうした方がいいんじゃない?」が積み重なり、動画ができました。
動画の文字は当初「フォントでやろう」と話していました。作っていく中で「手作り要素があったほうがいいよね」と、手書きの習字にしました。
皆で意見を出しあい、どんどん入れていく。この作業が楽しいです。