橦木館が自由空間だった頃の西尾典佑先生


文化のみち橦木館はかつて「橦木館」でした。

そこに集うひとびとから生まれたのが「東区まちそだての会」。往年の資料をいくつか持っています。それらの資料をデジタル化している中、西尾典佑先生の人物像が目にとまりました。

西尾先生は、橦木町界隈「文化のみち」においてよく知られている文筆家。2019年には愛知芸術文化センターにて講演されました。



西尾先生は「東区まちそだての会」にとって大切な方。気さくな方で「ほうじ茶の会」を催した頃は、よくお顔を出してくださいました。

※2020年まで文化のみち橦木館で月例開催。橦木町界隈のお話の機会として、ほうじ茶とお茶菓子で来館者をもてなしました。

2022年「文化のみち散歩シェア会」にもいらしてくださり、お話もうかがえました。


西尾先生のお話は、客観的かつ情景描写が生き生きとして、いつも興味深い!この時は、ご多用の中をぜひとお願いして、快諾くださいました。

最近の西尾先生は、検証が膨大な執筆中のため、ご多用とのお話。お会いできる機会が減り、さみしく思っていたところ、先生の記事を発見。

ひょうひょうとした快活な人物像、愉快なのでここに掲載します。ぜひご一読ください😊
橦木館をめぐる人々―その弐

にしおのりすけ

気がつくと その人は

日曜ごとに やって来て

枝を切り 草を抜き 落ち葉を掃き

一日 庭で過ごしている

見知らぬ人が いつの間にか「橦木館のお庭番」になっていた


彼の「庭デビュー」は 開館した年の「草取りパーティー」

何年も放置されていた草たちの あまりの勢いに閉口して

これは人海作戦で行かねば と

悪友 K子が考え出した作戦

「皆で草取りした後 縁側でビール飲みませんか。 おにぎりも枝豆も食べ放題」 

なんていう誘い文句に まんまとひっかかったらしい

しかし酷暑の下での草取りに 病み付きになる人がいようとは


何はともあれ この人の姿を見るとほっとする

また日曜が来たんだ と思う

夕刻 せめてものお礼にと

エビスビールの小瓶を 黙って差し出す

つまみは裏の畑でその日収穫した カブやキュウリや枝豆

秋には たき火に放り込んでおいた焼きイモ

野菜のみならず 炭焼き、木工、七輪陶芸と

最近は 創作にもめざめたよう


まさに庭は 創造の宝庫

楽しく一人遊びをする人を見て

私もまた 楽しむ


もしも万が一 いつの日か

木がなくなる時が来たとしても

彼はいつものように現われて

草をひいているだろう

いつものように ビールを二本飲んで

「じゃあ」と 手を挙げて 帰って行くのだろう
『自由空間』第二十六号より


冊子はほかにもあるので、折につけ紹介していきたいと思います😊

東区まちそだての会 寺尾